山の人びと ~移住者~

ふるゆ温泉 シェアサロンflow アキコさん

「温泉のある山暮らしの愉しさをみんなでシェアしたいです」

海外・九州→富士町に移住

着物をさらりと着こなし、凛とした佇まいが印象的なアキコさん。大学進学のため18歳で佐賀市を出て、東京で約15年、海外で約3年暮らした後、九州各地を巡り、古湯・温泉旅館の女将さんとの出会いをきっかけに古湯に移住。現在は、自ら「ふるゆ温泉 シェアサロンflow」を経営し、古湯でのイベントを多数企画実施するなどPR活動にも尽力しています。

 

移住を考えたきっかけを教えてください

アキコさん:佐賀には戻らないつもりで18歳の時に上京。東京ではシステムのデザインや出版社で編集の仕事をしていました。退職をしたタイミングで友達のいるイギリスへ。友達が野外フェスの仕事をしていたので、お手伝いをしながら一緒にイギリス南部を周ったのですが、キャンプで寝泊まりする生活が続き「温泉に入りたい!」って気持ちになって(笑)。日本に戻る時は温泉地で暮らしたいと思ったのです。

 

-帰国後は、温泉を求めて九州各地を巡ったというアキコさん。福岡に1年、長崎に1年暮らしたそう。

アキコさん:実は、九州で移住先を探していた時に女将さんに出会っていたのですが、古湯で良い物件が見つからなくて。数年後、佐賀市内で女将さんとばったり再会。女将さんから古湯で飲食店をオープンさせたいから手伝ってもらえないかと誘われすぐに承諾しました。

 

-アキコさんをはじめとした、女将さんを慕う人々が集まり、なんと店舗の改装からお手伝い。そして2015年6月6日に女将さんのお店「キッチン10」はオープン。アキコさんはお店の近くに物件が見つかり、古湯で新しい生活を送るのでした。

 

温泉街・古湯での生活はいかがでしたか?

アキコさん:住まいにはお風呂がなくて、毎日温泉に入っていました(笑)。食事はキッチン10のまかない。女将さんの手料理はもちろん、お父さん(女将さんのご主人)が作る無農薬のお野菜を食べられるのが何よりも幸せでした。当時は家賃なども含めて6万円くらいで生活していたと思います。温泉街の人たちとは、女将さんがつないでくれて。自然と山ぐらしに馴染めたのも女将さんのおかげです。地元の人たちが通う温泉があるのですが、そこでは朝と夕方 “湯の会議”があって。温泉で出会えば年齢は関係なく、おばあちゃんともすぐに “友達”です(笑)。

 

-都会では感じられない“顔がわかる”密なお山のコミュニティに心地よさを感じたというアキコさん。当時住んでいたのは、出張診療所として使われていたというちょっと特別な一軒家。海外にも友人や知り合いの多いアキコさんは、そこをシェアハウスにしていたそうで…。

アキコさん:6~7年ほど住んでいたのですが、2~3人シェアメイトがいた時期もあります。日本人だけでなく、海外から来る友人がショートスティすることもありました。ロシアからきた夫婦は2週間ほど滞在して古湯が大のお気に入りに。翌年も遊びにきて私以上に古湯を満喫していました(笑)。

 

-アキコさんを通じて古湯を知った方や、お山に移住した方も少なくありません。地域の人たちと移住者をつなぐハブのような存在にアキコさんはなっています。

 

アキコさん:女将さんがキッチン10をオープンした理由が、古湯は敷居が高いというイメージがあるから、みんながふらっと立ち寄れて交流ができるような場所を作りたいという想いからでした。そんな気持ちを知って私も何かしたいと思い、閉店後のお店を使って月に1回「満月酒場」を夜オープンしたり、不定期で古湯を楽しんでもらえるような音楽やお散歩のイベントを開催したりしました。温泉のある山暮らしの愉しさをみんなでシェアしたいですね。

 

-ちょうど同世代の移住者も増えてきた時期だったようで、地域、年齢に関係なく、さまざまな人たちが交流。お山の新たなコミュニティも生まれていったそう。

 

買い物や休日はどうされていますか?

アキコさん:買い物は温泉街にあるお店やお山の直売所で購入しています。近所にない自然食品の調味料などは、お山のみんなの分もまとめて私が注文。“Eコープ”って呼んでいます(笑)。休日は、お山の人たちと集まって食事会をすることも。みんな料理上手で、どれも美味しいですよ。お山暮らしを始めてからミツバチを育てているのですが、春と夏はハチミツを採取したり、ミツロウでクリームなどを作ったりもしています。

シェアサロンはどんなきっかけで始められたのですか?

アキコさん:サロンの隣にある1日1組限定の宿「泊まれる図書館 暁(あかつき)」を運営するようになり、サロンのオーナーさんと出会いました。ずっと空き家になっていたので素敵な建物なのにもったいないって思っていて。オーナーさんにお願いし、サロンを月に1回お借りして、マルシェやヒーリングを楽しめるイベントをするようになりました。イベントでは、出店者も含めいろんな地域からお客さんが来ていただけて。そんな様子を見てオーナーさんがとても喜んでくれて、サロンを経営するようになったのです。

アキコさんが経営する「ふるゆ温泉 シェアサロンflow」(写真手前)と、築120年の古民家を改修したという1日1組限定の宿「泊まれる図書館 暁(あかつき)」(写真奥)。
アキコさんが経営する「ふるゆ温泉 シェアサロンflow」(写真手前)と、築120年の古民家を改修したという1日1組限定の宿「泊まれる図書館 暁(あかつき)」(写真奥)。

-サロンは美容室をするために20年ほど前に建てられたという洋館。吹き抜けの3階建てとなっており、壁には桜島の火山灰が塗り込まれ、床下には竹炭が敷かれているなど、こだわりが詰まった空間となっています。オーナーさんは「アッコちゃんのおかげで空き家を活かせることができて嬉しい」と笑顔で話されていました。

アキコさん:試行錯誤しながら、2022年3月26日に「シェアサロン〜flow〜(フロウ)」はオープンしました。せっかくだからいろんな人にサロンを使ってもらいたいと思い、レンタルサロン・スペースとして提供。施術や展示会、イベントなどをしたいという方にお貸ししています。また毎月26日は「flowの日」オープンデーとなっており、サロンを開放しイベントを行っています。月によって内容は変わりますが、ヘアサロンやカッサ、波動音響セラピー、鍼、整体などの施術のほか、数量限定でランチを提供することも。メニューによって予約優先になりますが当日でも施術を受けられます。

趣味で着物を着ているというアキコさん。東京の学校で着付けを習い、着付けの免許を取得。「flowの日」には浴衣や着物を気軽に楽しめる「着付け体験」を行うこともあります。
趣味で着物を着ているというアキコさん。東京の学校で着付けを習い、着付けの免許を取得。「flowの日」には浴衣や着物を気軽に楽しめる「着付け体験」を行うこともあります。

アキコ:私自身マッサージが好きで、古湯でも受けているのですが、軒数が少なく高齢化も進んでいます。温泉街として癒しの場がないのは寂しいなと感じていて。湯治処として温泉+ヒーリングの場を提供できたらいいなと思っています。出店者の中には遠方から来ている人もいて、仕事終わりに温泉に入って、施術者自身も古湯を楽しんで帰っています。

-古湯を心から愛するアキコさん。「古湯はアルカリ性の単純温泉で無臭、36〜37度のぬるま湯なので、どなたでもぬる〜く、ゆる〜く楽しめますよ」と話します。

これからの夢を教えてください

アキコさん:海外からの観光客の方も増えてきたので、着物やお料理など日本の文化を体感してほしいです。古湯にいろんな方が出入りしてさまざまな交流できたらいいなと思います。


取材時:2024年7月

・シェアサロンの情報はコチラ

・Instagram  @furuyuonsen.share_space.flow

応援メッセージ

1度、移住をしてみるとハードルが下がると思います。「ずっと住み続けないといけない」と思い詰めずに気軽に移住してみてはいかがでしょうか。