山の人びと ~地元の人~
2019年に富士町にUターン
進学のために上京し約10年間東京で生活した後に、子育てを機に富士町にUターンした美波さん。母・真理さんが立ち上げたグループ「夢見るぽぽりん」のメンバーとして、「ポポー」の商品開発や販売、SNSでの情報発信を担当。新たな活動として、富士町にあるコワーキング&レンタルスペース「音無テラス」の1日店長を務め話題に。意外にも人見知りという美波さんと、元気いっぱい行動派の母・真理さんにお話を伺いました。
「ポポー」って何ですか?
母・真理さん:ポポーは北米原産のバンレイシ科の果実で、英名を「カスタードアップル」と言います。リンゴとバナナとマンゴーをミックスさせたような濃厚な香りと甘みを持っていて、クリーミーな食感です。熟してから傷むのが早く、市場での流通が難しいので、 “幻のフルーツ”と呼ばれたりしています。
「ポポー」の栽培をはじめたきっかけを教えてください。
母・真理さん:栽培のきっかけは、夫にポポーを食べさせたいという思いからでした。私の実家にポポーの木があり、私は幼い頃からポポーを食べていました。結婚を機に富士町に移住したのですが、夫がポポーを食べたことがないというので、ポポーの木を自宅に植えようと。当時は、全国的にもポポーが珍しい時代。苗木を買いに行くとお店の方も「ポポー?」という感じで。お店の方に売っているところを調べてもらい京都から苗木を取り寄せていただきました。自宅の庭と畑に植えたのですが、全然実がならなくて…。やっとポポーを食べられたのは4~5年後でした(笑)。
ポポーの果樹園。母・真理さんが栽培と収穫を行い、娘・美波さんが仕分け作業を行っています。
「ポポー」の商品をなぜ作ろうと思ったのですか?
母・真理さん:ポポーが実るようになり1年後には100個ほど収穫できるように。地域の人たちにもポポーを食べてもらいたいと思いましたが傷むのが早いため、ババロアにしてご近所の方に配りました。それから年々ポポーの収穫量が増えてきて、捨てるのはもったいない!と思い加工品を作ることに。トロピカルフルーツのような味はアイスクリームに合うと思い、ミルン牧場さんにお願いをして商品化してもらいました。販売意欲はなく、富士町にこんな果物があるんだ!とアイスクリームをきっかけに知ってもらいたかったのです。
アイスクリームを開発した後、次はポポーのキャンディー作りにチャレンジした母・真理さん。幾度の苦難を乗り越え、やっとキャンディーが完成した時期に美波さんがUターンするのでした。
美波さんが母・真理さんの活動に参加したきっかけを教えてください。
娘・美波さん:2019年10月、子育てをきっかけに富士町に戻りました。富士町にいる頃は、ポポーのことは母が何かしていると横目で見る感じで(笑)。全然、何もしていませんでした。Uターンした時にはポポーのキャンディーが出来上がっていたのですが、飴なので気温が高いと溶けてしまうことがあり母が困っていたので、「じゃあ飴を使って綿あめを作ったら?」と提案。そしたら母が「じゃあ、あんたが担当ね!」という感じでポポーの活動に関わるようになりました。
当時、美波さんは30歳。イベントに出店する際は、美波さんのかわいい娘さんも一緒に参加し親子3代で活動しています。
娘・美波さん:ただの綿あめなら面白くないとカラフルにしました。イベント出店時に、親御さんが子どもの手が綿あめでベタベタになることを気にしていたので、サイズを小さくして丸めてカップに詰めて販売するように。綿あめをきっかけに、「ポポーって何ですか?」と興味を持ってもらえるようになりました。
「夢見るぽぽりん」では、ポポーのキャンディー、綿あめ、ポップコーン、ジュレを開発。中山間地域の直売所や、佐賀市内のイベントで販売をしています。
「ポポー」を生で買うことはできますか?
娘・美波さん:ポポーの成熟期はだいたい9月ごろ。8月終わりから10月頭の収穫ピーク時は、1日何百個と収穫できるので、親子で夜通し作業をして、中山間地域の道の駅や直売所等に出荷しています。すぐに完売するので、1日3回配達することも。唐津市の直売所からも出荷してほしいと依頼がくるようになりました。
現在、「夢見るぽぽりん」は、真理さん&美波さん親子をはじめ、富士町や神埼市の方がメンバーとなり、ポポーが地域の特産品になることを夢見て楽しく活動中です。いつか「富士町と言えばポポー」という日がくると良いですね!
取材時:2024年6月
母・真理さん:星がきれいなところです。天の川を初めて見たときは星の輝きにびっくりしました。山には食べられる植物が豊富で、それらを使った四季折々の料理を作るのも楽しいですよ。虫さえ克服すれば山は天国です(笑)!
娘・美波さん:水と空気がきれいなところです。富士町にいる頃はそれが当たり前にあって有難さが分かりませんでした。お山の美しい自然に癒されてください!私が「音無テラス」で1日店長する際は、ポポーのデザートやドリンクを出せたらと思っていますので、イベントを通じてポポーを知ってもらえたら嬉しいです。
「夢見るぽぽりん」の活動はインスタをご確認ください!
Instagram @dreaming_poporin
住人歴:57年
佐賀県重要無形文化財「名尾和紙」の最後の工房として、伝統の技を次代に継承する谷口祐次郎さん(6代目)。伝統のモノ・技術に興味のある若者や、移住を検討する方から相談を受けることも多いのだそう。幅広い層の方と交流のある谷口さんに、松梅地区についてお話しを伺いました。
松梅地区の魅力はどんなところですか?
のんびりしている、穏やかな雰囲気がいいなと思います。ご近所の方との遠からず、近からずの距離感もちょうど良いです。ご近所の方からお野菜をもらうこともあります。
実は、県外で数年間サラリーマンの経験もあるという谷口さん。
私も分かるのですが、町(中心地)だと、カーテンを開ける時や、ゴミ出しなどちょっと家を出る時にも人の目が気になりますよね。ここでは人目を気にせず、のびのびと暮らせます。松梅地区のことを、私たち地元の人は“奥座敷”と呼んでいます(笑)。町から近いのに、小道を1本入っただけで、ここには静かな時間が流れている。日本の原風景を感じられる場所だと思います。
松梅地区のお気に入りのスポットを教えてください。
「名尾地区公民館」(旧名尾分校)です。宿泊施設として貸し出しているので、キャンプもできます。イベントスペースとしても利用が可能です。
病院、買い物などは、どうされていますか
私は車があるので、病院や買い物は特に場所を選びません。病院によっては、佐賀市中心部のところに行くこともあります。買い物はネットも利用しますが、佐賀市中心部と変わらない配達期間です。
車の免許を返納した高齢者の方や、まだ車の免許を持たない子どもたちは、「デマンドタクシー」(※事前に利用登録が必要)を利用しています。予約をすれば、利用者の玄関まで迎えに来てもらえ、目的地までドア to ドアで移動可能。松梅地区の便利カーです。うちの母も頻繁に利用させていただいており、路線バスのない松梅には欠かせない存在です。私も、将来利用させていただきたいと思っています。
※デマンドタクシーを利用するには事前に利用登録が必要です。
(問い合わせ先)
・佐賀市 大和支所 総務・地域振興グループ (電話) 0952-62-1111
・佐賀市 交通政策課 (電話) 0952-40-7038
取材時:2023年2月
松梅地区は、中山間地域の中でも佐賀市中心部に近いエリアなので、車通勤の方にも良い場所だと思います。
子育てには、山が一番。自然の中で生き物と触れて、虫などの種類も覚える。いろんな体験を通して、応用がきく人間になれると思います。町の人は「体験」をするのにお金を払いますが、ここではタダです(笑) 。空き家バンク制度もありますので、古民家に興味がある方は利用してみてはいかがでしょうか。
住人歴:70年
現在、富士まちづくり協議会の会長として、富士町民のために尽力する𠮷浦さん。過去には、「九州一周駅伝」の佐賀県選出メンバーとして活躍。その後、総監督を務めるなど、30年に渡り「九州一周駅伝」に携わってきた経歴もお持ちです。今回は、会長として、富士町民のお1人として、富士町愛を語っていただきました。
富士町の魅力はどんなところですか?
人が良いところです。富士まちづくり協議会に従事しているのですが、さまざまな場面で地元愛を感じます。子どもから大人まで、みんな富士町のことを大切に思っています。
富士町の風景で言えば、美しい里山や古湯の温泉街、雄大な嘉瀬川ダムも自慢です。
お気に入りのスポットを教えてください
銀河大橋のたもとにある「みはらしの丘鷹の羽公園」の桜です。私も入植に関わったこともあり、個人的にも思い出深いところです。バイカーの聖地にもなっています。4月中旬が見頃ですので、きれいな桜を見に来ていただければ嬉しいです。
通勤、病院、買い物などは、どうされていますか
移動には車を買うので、町外の病院にも通っています。食料品は町内のJAで、衣料品などは佐賀市中心部に下っています。富士町には、コミュニティバス(路線バス)も運行しているので、日常の移動手段にも利用できます。
取材時:2023年2月
“住みやすい町”を作っていきたいと常々考えています。地元の方だけでなく、移住されてきた方にとってもです。移住された方に「期待外れ」と言わせたくない。みんなの理想的な町にしていきたいです。そのためにも、いろんなことをバックアップしていきたいと思います。“移住者”ではなく、同じ富士町民として、共存・共有できたら幸いです。
平成31年2月、松梅公民館の中で生まれたサークル「元気‼なごみ」。松梅の地域づくりのためにと、松梅地区に住む女性7名に声がかかり結成。月に1回、松梅の人たちに向けて「元気‼なごみ」を松梅公民館で実施しています。
メンバー:本田さん
「最初は『うたごえ喫茶 和(なごみ)』という名称で活動をスタートさせました。みんなで色んな曲を歌って楽しむことをメインにしていましたが、コロナの流行に伴い一時中止にしていた時期もあります。そして、令和3年8月に活動を再開。サークル名を『元気‼なごみ』に改名し、歌は控えめに、ゲームや踊りなどもプログラムに取り入れることにしました。」
「元気‼なごみ」の再開を心待ちにしていた松梅の人たち。回を重ねるごとに参加者は増え、時には別のエリアから見学に来られる方もいらっしゃいます。
毎月テーマを変えて“みんなで楽しく”がモットー
「元気‼なごみ」では、メンバー7名で毎月司会を交代し、司会担当の方が月のテーマに合わせてプログラムの内容を考えています。
前半は司会担当の方が選んだ曲をみんなで歌う時間です。季節を意識した歌もあれば、司会担当の方が歌いたい曲を入れたり、童謡、民謡、歌謡曲、J-POPなどバラエティ豊かな曲目です。参加者の方には、歌詞が綴られたファイルが配られており、歌詞を見ながら歌えます。
司会者がマイクを持って参加者のところを回りながら声をかけていきます。歌う、歌わないは参加者次第!手拍子や振り付けで楽しむ方も。司会者の軽妙なトークも加わり、和やかな雰囲気に包まれています。
おやつは校区食改協さんの手作り
休憩の“おやつタイム”に出されるスイーツは、「元気‼なごみ」のメンバー小副川さんが担当しています。佐賀市食生活改善推進協議会や健康ひろげ隊などにも所属する小副川さん。地域の人や園の子どもたちにみそ作りなども教える食のプロです。
校区食改協の皆さんと前夜から松梅公民館に集まり、おやつの下準備をし、当日に仕上げています。取材時のメニューは「ところてん」と「ずんだもち」。ところてんは天草(てんぐさ)から煮込み、ずんだもちは枝豆を湯でてすりつぶすことから仕込みをされていたそうです。
ゲームや踊りで頭や体もリフレッシュ
後半はゲームや踊りで頭や体を動かします。囲碁手玉や輪投げ、牛乳パックを使ったタワーゲーム、新聞紙のホッケーなど、みんなで楽しめるゲームが用意されており、童心にかえり盛り上がります。
時には、お話しの活動をされている本田さんが絵本の朗読をしたり、なごみメンバーと公民館スタッフ等も加わりサプライズの踊りや演奏を披露したりすることもあります。
松梅の地域の人たちも「毎月が楽しみ」
毎月参加されるご夫婦の方は、「元気‼なごみは、夫も楽しみにしています」と笑顔で話します。女性、男性問わず、お孫さんを連れてくる方もいらっしゃいます。夏休み期間中には児童クラブの子どもたちも参加。絵本の朗読や、えびす音頭に一緒に参加していました。
本田さん
「“シニアでも元気で花を咲かせたい”をテーマに、松梅の方たちと楽しい時間を過ごしたいと思っています。ぜひお気軽に参加してください。大歓迎です。」
最後に、松梅地区の魅力を教えてもらいました。
小副川さん
「私も結婚を機に県外から松梅に越してきました。住めば都です。松梅の学校は小さいので先生や地域の人たちの目が行き届いています。人が少ないのでコミュニティが密のところも魅力です。」
本田さん
「松梅は近くに山があり、美しい川が流れる、自然がいっぱいの場所です。11月~12月には、松梅名物“干し柿”を楽しめます。人との付き合いを大切に、お世話をしてくれる方も多いですよ。」
【実施情報】
場所:松梅公民館(佐賀市大和町大字松瀬2530-1)
毎月第4週木曜日 午後2時~
※11月は第3週木曜日、12月は第2週木曜日(クリスマス会)
参加費:200円(おやつ代)
対象:松梅地域の方